人もヤマネコも、ともに対馬で暮らしていくために。

① はこわなによる錯誤捕獲の防止を目指して

  対馬野生生物保護センターへ収容されてくるヤマネコのおよそ半数は、民家の周辺などに設置されている「はこわな」による錯誤捕獲によるものです。これらのはこわなは、野生動物から家禽などが襲われることを防ぐために設置されていることが多いですが、1頭の動物を捕らえても次々と別個体が来てしまうため、根本的な解決にはなりません。

 

※ツシマテン、ツシマヤマネコを対象とする捕獲は原則、学術研究や保護を除き禁止されています。

 どうぶつたちの病院では、令和3年度に長崎県の「緑といきもの賑わい事業」の助成を受け、

継続的な野生動物の侵入被害防止対策およびはこわな設置を抑止する目的で、鶏小屋の補修作業を依頼者と協力して行う取り組みを始めました。

●対馬島内でテン・ヤマネコによる侵入被害にお困りのみなさまへ

・わなの設置より、侵入経路の把握・修復が最も効果的です

・ご依頼があれば、法人職員が現地での修繕作業をお手伝いします

・自動撮影カメラを用いた侵入経路の調査依頼も受け付けています

 

 

 

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② くくりわなによる錯誤捕獲の増加について

 対馬では近年、シカ・イノシシの増加に伴う農林業被害や下層植生へのダメージが極度に進んでいることから、行政機関が連携しながら有害鳥獣駆除に取り組んでいます。

 島の生態系を守るには、現在の1/10程度までシカの頭数を減らす必要があり、一人でも多くのハンター、1頭でも多くの捕獲数が求められる実状がある一方で、ツシマヤマネコが「くくりわな」にかかってしまう事例が顕著に増えています。

2023/4/29時点での集計結果。足の先端のケガによる個体収容が増えている。
2023/4/29時点での集計結果。足の先端のケガによる個体収容が増えている。

表. くくり罠による錯誤捕獲と足先の負傷による収容事例の一覧

●外傷はのちのち重症化するケースがほとんどです

 毛がある状態ではわかりにくいですが、罠のワイヤーで皮膚の表面が擦れたり血のめぐりが悪くなったりしているため、日が経つほどに皮膚や筋肉の腐敗が進んでいきます。

 

<その場で罠から放された場合・・・>

傷を負ってしまったヤマネコの足は徐々に壊死し、餌を捕ることは出来なくなる可能性があります。その結果、壊死の痛みと空腹に長い時間苦しみ、野生で生きていくことは一層難しくなります。

 

 

2023年4月に美津島町で保護された個体。一命はとりとめたが削痩し、衰弱した状態であった。
2023年4月に美津島町で保護された個体。一命はとりとめたが削痩し、衰弱した状態であった。

●対馬島内の狩猟者の方々へお願い

もしもくくりわなにヤマネコがかかったら・・・

 ・ヤマネコが狩猟用の罠にかかっても、故意でなければ罪には問われません

 ・その場で放獣せず必ずセンターへ連絡を!!24時間受け付けています

 

くくりわなを設置するときは・・・

 ・必ず「1日1回の罠見回り」を!!

 ・早期の発見・治療によりケガを治すことができます

 ・どんなケモノ道も、ヤマネコとシカが共有している可能性があります

 ・締め付け防止金具は、「輪の直径が約3cm」※になる位置にお願いします

 

※直径3cmの輪で必ずヤマネコが抜け出せるとは限りませんが、締め付けに余裕を持たせることで血流の遮断をやわらげ、断脚は免れられる可能性があります。