悲しい出会い

皆さま

こんばんは。職員の太田です。

 

対馬はすっかり冬模様で比較的暖かいとされる南部のツシマヤマネコ順化ステーションでも霜が降りる日が増え、最低気温も氷点下近くなる日が続いております。

朝起きるのが辛くなり、外に出るのも躊躇する気温の日がありますが冬から春先にかけて動物達にとっては大事な繁殖期となり縄張りを持つような生物は活発に動き回り遭遇する機会が増えたりもします。

 

動き回り遭遇する機会が増えるという事は、動物との事故のリスクが増加するという事でもあります。報道発表等でご存知の方もいるかと思いますがツシマヤマネコはここ数年の中では最悪のペースで交通事故が起こり、毎週のように死亡事故が発生しております。

 

報道発表があるヤマネコのかげで、ツシマテン、シベリアイタチ等の交通事故も発生しています。

交通事故により死亡したシベリアイタチ(2021.12.04撮影)
交通事故により死亡したシベリアイタチ(2021.12.04撮影)

 

ヤマネコに注目が集まる中、ひっそりとそして急激に数を減らしているシベリアイタチですが、保護に関してはヤマネコより難しいのではないかと思われます。

 

まず、対馬内での基礎データが少ないという事があげられます。

どのような分布をしているのか、どれくらいの個体数がいたのか、個体密度はどれくらいが適正なのかが判らないままに生息数が急激に減少しています。この減少しているというのもヤマネコの個体数調査で仕掛けた自動撮影カメラへの映り込み回数の減少から判明したに過ぎません。

 

二点目に、イタチは河川や沢等の水辺を好む生き物ですがシカ、イノシシ被害での山野崩壊による沢枯れが急速に進んでいます。地形を変化させるほどのシカ、イノシシ被害をシベリアイタチが自力で個体数をどうにか維持している間に解決するのは難しいのではないかと思います。

 

三点目に、国内のシベリアイタチは対馬だけが在来種でほかの地域の個体は移入種であり駆除対象である場合もある事があげられます。この問題点は厄介で一方では保護を進め、また一方では駆除を進めるというなんともチグハグな状況を作り出しています。

 

最後に、継代サイクルが早いという事も挙げられます。これは良くも悪くもあるのですがイタチの野生化の寿命は数年で比較的早い継代サイクルを取っています。適正な生息環境があれば個体数の増加も早いですが、生育環境の悪化などにより繁殖が出来ない状況になったりすると継代サイクルが早い事があだとなり見る見る個体数を減らしてしまいます。ヤマネコ等は野生化の平均寿命が7~9年とされているので個体の減少速度はイタチと比較すれば緩やかです。

 

このように問題が山積する中、2020年に環境省レッドリストは準絶滅危惧種(NT)から絶滅危惧種IB類(EN)へと格上げされました。

人知れず進むシベリアイタチの減少は食い止めることが出来るのか…

自身として何が出来るのかが非常に難しいですが、交通事故だけでも防ぐよう気を付けようと思います。