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3代目 普及啓発担当ヤマネコ 福馬が旅立ちました

 

 福馬についてのプレスリリースが昨日ありました。多数の方に愛していただいていた対馬野生生物保護センターのツシマヤマネコ、No.23 福馬が7月27日に旅立ちました。

 

 忘れもしない昨年末12月30日の休館日、この日から福馬の体調に変化が見られ始めました。歩行時によろめき転倒してしまい加齢による足のふらつきかとも思われましたが越田先生とも相談し検査となりました。血液、エコー、X-ray、外注検査等と実施しましたが異常は見当たらずといった感じで安心しつつも同時に原因がわからない不安を感じました。検査後は福馬の様子を見ながら展示場に戻したのですが視野狭窄が出始めたようで餌を与えに展示室に入室しても、こちらの場所がわからないと言った様子が見られ始めました。再度、飼育チーム、関係者と相談し展示を中止し福馬には養生してもらうことを優先してもらうことになりました。

 しかし、視野狭窄の進行は早く2月の上旬には、殆ど視力がないような状態になっていました。入院室での飼育をしながら移動先である非公開ケージの池を埋め、植えられていた樹木を移動させ、水栓柱も取り外し、ケージ全体に柔らかい土を搬入し小さな草原のような空間で暮らしてもらうことにしました。移動当初は慣れない様子でしたが、少しずつ環境に慣れてくれて3日もすると草の茂みに入って休んだり、草を食むようになってくれました。その後は比較的長い期間ふらつき等の異常は見られなくなっていました。

 容態が急変したのは7月23日の夕方、夕給餌前に後肢にふらつきが見られるようになりました。翌日にも同様の症状が見られたため入院室に収容しましたが、そこからいっきに容態が悪くなり歩くのもしんどいといった感じでした。それでも、どうにか自力での採食、排泄は出来ていました。
 
 死亡する前日から自力での採食が難しくなり鼻カテーテルを留置しての流動食による給餌に切り替えていました。正直言って福馬はきつかったと思います。

 そして7月27日の15時過ぎに自立呼吸が止まり人工呼吸を試みましたがそのまま旅立って行きました。

 福馬の体調が悪くなり始めてからの約7か月間は暗視カメラとレコーダーを使っての24時間モニタリングを継続していました。手書きの飼育所見はびっくりするほど分厚くなりました。自分が福馬と共にするようになって最も濃密な時間を過ごした期間でした。旅立つ直前まで足腰が思うように動かなくなっても自力採食、自力排泄をしてくれていました。これは動物と一緒に暮らす側にとっては凄く助けになりました。そして改めて福馬は頑張ってくれていたと実感できます。福馬、本当にありがとう。そして普及啓発のお仕事お疲れ様でした。

 

 最後に福馬にありがとうという気持ちを込めてセンターに小さな献花台を設置してもらいましたので、お近くに寄られた際や対馬にくる機会がありましたら、お別れに来ていただけたらと思います。