· 

収容からの「きせき」

皆さま

こんばんは、職員の太田です。

 

昨日は嬉しい事に治療を続けていたヤマネコが野生に戻っていきました。

事の始まりは2月1日、通報者からの一報を受け環境省職員2名、当法人から太田、蔭浦の2名、合計4人で現場へと向かいました。現場はかなり山深い個人所有の林道で、シカを駆除するた為のくくりわなに掛かっていました。太田と蔭浦で罠から外しキャットキャリーへと収容し、環境省職員が通報者から簡易的な聞き取りを行いヤマネコセンターへと連れ帰りました。

 

センター到着後に精密検査を行い、入院室での治療が始まりましたが流石は野生を体現化したような生物だけあって、すぐに入院室内での悪戯を始めてしまいました。治療の為に収容したのに他の箇所まで怪我をされては困るという事で、この日から24時間体制での治療がスタートしました。文字通り室内監視モニター前に獣医、飼育員が待機し悪戯をしたり変わった様子が見られたら入院室へと入室し確認し続けました。

 

ヤマネコをはじめ動物の診察は保定と呼ばれる動物を軽く押さえて動かない状態でするのですが、太田と蔭浦で保定をしながら越田理事長に「どんな具合ですか?」と尋ねては理事長から「う~む…」と返答が帰ってくるような日々が続きました。

 

収容した原因となったくくわなのワイヤーによる傷は見た目はワイヤーによる擦り傷だけに見えますが圧迫されていたことにより、重症化することが多く、収容個体も血行障害により圧迫箇所周辺の皮膚の一部が腐っていきました。幸いなことに時間を掛けながらも徐々に新たな皮膚が再生してくれました。どうしても皮膚の再生が難しい箇所については手術を行いました。

手術後の回復は目覚ましく見る見る傷が良くなり昨日49日間の治療を終えて野生へと帰っていきました。

放獣すると一目散に山へと向かって行き、力強さもある歩様で安心しました。山に入るとこちらを一瞥したのが印象的でした。

 

今回の収容原因となったくくりわなについては色々な意見があると思いますが、現状の対馬においては山野での植生崩壊の原因となるツシマジカの頭数を管理する上では必須です。はこわなを用いたり誘因してヤマネコがかからない場所への罠設置へと変えていく事をしながらも、罠の見回り頻度を多くしてもらったり、ヤマネコが掛かってしまっても罪に問われないので即座に通報してもらうという普及啓発を徹底していくしかないと思います。

 

そもそもの植生崩壊のトリガーをひいてしまったのは人であり、動物達は実直に生を謳歌していただけですので、個人として、法人職員としても可能な限り人にも動物にも配慮した保護活動を担っていければと改めて考えさせられました。

 

昨日は丁度太田の誕生日でもあり思い出深い日となりました。